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骨髄提供にともなうドナーの休業問題

 

 例えば、仕事を一日休んでドナー登録をしたとする。検査をすませて登録したHLAは第一段階のものであり、そのドナーのデータと登録ずみ患者のデータがコンピュータで検索される。その結果が合致していると、さらにくわしい二次検査を受ける。二次検査の結果が適合していれば、今度はMLC検査で、移植を受ける患者との相性を調べることになる。この際にもドナーは、登録時と同様に出向くことになる。また仕事を休まねばならない。こうした検査の時を利用してコーディネーターから、非血縁者間の骨髄移植に関して説明を受ける。いわゆる、ドナーに対するインフォームドーコンセント(知らされた上での合意)が行われる。

 この段階まで、ドナーはもし気持ちが変われば、いつでも骨髄提供を拒否するということができる。ただし、患者が骨髄移植のための前処置に入ってからは、骨髄提供を拒否することはできない。なぜならば、前処置の始まった患者は毒薬をあおった状況にあるにひとしく、このまま移植が行われなければ、患者は間違いなく死亡するからである。

 すべての検査結果が移植可能となり、ドナーの承諾が得られれば、いよいよ骨髄採取である。骨髄液採取に際しては、さらにさまざまな検査を行い、また骨髄穿刺にはかなりの痛みをともなうので、ドナーに全身麻酔がかけられることになる。その回復も含め、数日間の入院をしなければならない。当然、仕事はまた休むことになる。さらには、骨髄採取時にドナーの貧血状態解消を目的に行われる自己血輸血の事前採血のため、場合によってはまた休まねばならないこともある。

 こうしたドナーに対しては、先に述べたように、患者の負担で保険が掛けられている。この保険の意図は、骨髄採取時に麻酔を使うことでもあり、その発生確率はきわめて低いとはいえ万が一の麻酔事故を考えに入れてのものである。したがって、そこには骨髄提供にともなうドナーの休業補償は含まれていない。この基本的な考え方は、骨髄提供はあくまでもボランティア精神に基づいた行為であるので休業補償はできない、というものである。

 しかし、こうした問題をよくよく考えてみると、仕事を休んで賃金をカットされ、それでも人  ひとりの命を救うために痛い思いをしようという人は、そうたくさんはいないであろう、という現実である。本格的に骨髄バンクを機能させていこうという、社会全体を視野に入れた物の考え方をするならば、ドナーの問題をこのまま放っておいて良いはずはない。