てんかんの部分発作(要素発作)

 てんかん発作の症状は多様であり、診断においてはどのタイプのてんかん発作であるかを決めることが最も重要である。しかし、てんかんについての考え方の違いとか、何を基準として分類するかによってその分類もかなり違った内容となる。ギブス(Gibbs)やレノックス(Lennox)は、脳波異常と発作症状にもとづいて分類したが、ヤンツ(Janz)は、小発作と大発作に大別し、特に大発作についてはそれがよくおこる時間帯によって、睡眠てんかん発作、覚醒てんかん発作、不定型てんかん発作の三群に分けた。このほかにペンフィールド(Penfield)とジャスパー(Jasper)は、臨床症状を重視して、それに脳波所見を加えた分類をおこなった。ペンフィールドとジャスパーの分類は、 1969年に国際抗てんかん連盟によってつくられた、てんかん発作の国際分類に反映され、これが世界的にもかなり普及している。 1981年には、この分類の一部改訂案が出されているが、この分類は、後で述べるてんかん分類のもとになるものである。

 (1)部分発作(要素発作) (partial seizures)

 a。単純部分発作  脳の限定された部位から、過度の異常放電がおこるてんかん発作を部分発作と言う。例えば、大脳皮質運動野に放電が生じれば、要素的な運動症状が表われる。てんかん発作焦点が特定の運動野に限定されている場合には、焦点性運動発作と言うが、発作焦点が広がっていくと、けいれん症状が生じる身体部位も広がり、ジャクソン発作と言われている。その他の運動発作には、発作焦点とは反対側に顔や体を回転させたり、両眼を回転させ、視線を一方方向に向ける回向発作や姿勢発作、声は出るが言葉がしゃべれない失語発作、本人の意志とは関係のない言葉を発してしまう音声発作などがある。

 また、大脳皮質特殊感覚領域に発作焦点が生じると、その発作焦点部位に対応したいろいろな身体感覚発作が生じる。例えば、中心溝後部の体性感覚野に発作焦点がおこると、この反対側の対応した部位に、異常感覚がおこる(体性感覚発作)。また、後頭部の視覚中枢に焦点が生じると、光や色などの異常知覚が生じる(視覚発作)。このほかに、聴覚発作や嗅覚発作、味覚発作などの要素性の感覚発作もある。

 運動発作や感覚発作などは、いずれも体性神経系にかかわる要素発作であるが、視床下部や大脳辺縁系に発作焦点がある場合には自律神経症状を伴う自律神経発作がおこる。これは、腹痛や吐気、唾液分泌などがおこったり、動悸亢進、発汗、呼吸異常などの自律神経諸症状を示し、さらに、不安や怒りなどの情動的変化をも随伴することが多い。

 b。複雑部分発作-これは、意識混濁を主症状としていて、種々の精神症状や行動異常が、てんかん発作時に認められるものをいう。

 意識障害のみが単独におこる発作は、意識減損発作といい、発作中の記憶は失われている。意識減損発作に、運動の要素が加わると、いわゆる自動症といわれている精神運動発作となる。精神運動発作時には、日常しなれている簡単なしぐさとか原始的な行動がみられ、例えば、眼を閉じたり、いろいろな表情をしたりする。発作がおこっているあいたの記憶はまったく失われていて、その閧に自分が何をしたかをまったく覚えていない。この発作中には、かなり複雑な行動をも行なってしまうこともしばしば認められる。これらの複雑部分発作では、多くの場合、側頭葉領域に限局して焦点性発射が認められる。

 c ニ次性全般化部分発作-そもそもの発作は、特定の脳部位に限定された部分発作であるが、それが脳の深部や両側大脳半球に広がり、最終的には意識を完全に失い、次に述べる全般性の発作へと移行するものを言う。症状としては、問代性けいれんや強直けいれん、強直一間代性けいれんなど、全般発作と同一の症状をなす。