中枢神経性五障害:進行性筋ジストロフィー症など

中枢神経性五障害

その他の中枢神経系の傷害による運動障害がいくつかあげられる。

 a。二分脊椎(spina bifida または脊椎破裂)胎児期の脊椎形成不全のため、椎弓と棘突起の癒合がすすまずに左右に分かれたままとなり、本来その内部に保護されるべき脊髄が髄膜ごと後方に脱出する。腰・仙髄に好発するので、下肢部のマヒが起こりやすく、膀胱、直腸の支配神経の圧迫・変性が起こり、排泄機能もマヒする。運動とともに、両下肢の感覚障害を生じる。また脳脊髄液の漂流異常を伴うので脳水腫(次項)を合併することが多くて、二次的に知能障害、精神発達遅滞へと発展する。早期に形成手術をうけリハビリテーションを行なうことが必須である。

 b。水頭症(hydrocephalus脳水腫)一脳室とクモ頷下腔を流れる脳脊髄液が、その通路の一部の閉塞のために流れにくくなり、貯溜してしまって頭蓋内圧を高め、頭蓋骨をおしひろげて巨頭となる。この脳障害では運動機能というよりも、中枢機能の全般的な障害をもたらす。

 (2)筋・骨格系障害による運動障害

 筋系あるいは骨格系のなんらかの障害によって生じる運動障害の主なものをあげる。

 a。筋ジストロフィー(進行性筋ジストロフィー症progressive muscular dystrophy)一筋肉の変性が進行してしだいに運動障害が重くなる。筋は変性萎縮して筋力が低下してゆく。種々のタイプがあるが、共通して遅速の差があるが進行性であること、遺伝性があること、筋の萎縮とともに血清のCPK(クレアチンリン酸酵素creatine phosphokinase)上昇がみられることなどがあげられる。

 〔Duchenne (ドゥシェンヌ)型(D型)〕 発病率が新生児10万人に約20人。男子にみられ伴性劣性遺伝によるといわれる。5~6歳頃、走りが遅かったり転びやすいなどから発見される。病因はまだ未解明であるが、最近、筋原説

  筋タンパク分解酵素の特異な増大によるとするーが注目され、それにもとづく治療薬の開発が急がれている。進行につれて、起立時には特徴的な「よじ登り姿勢」をとる。歩行不能となると、四つ這い、いざり移動にたより、下肢関節の拘縮・変形がめだつ。呼吸筋の収縮力も低下するので肺活量も減少してくる。現段階では残念ながら予後が悪い。

段階1:歩行可能、介助なく階段昇降可能く手すりも用いない)
段階2:階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
段階3:階段昇降不能、平地歩行可能、通常の高さの椅子からの立上り可能
段階4:平地歩行可能、椅子からの立上り不能
段階5:歩行不能、四つんばい可能
段階6:四つんばい不能だが、それ以外のはいかた(いざりばい)可能
段階7:はうことはできないが、自力で座位保持可能
段階8:ベッドに寝たままで体動不能、・全介助

 〔福山型先天性筋ジストロフィー(F ・ CMD)〕 D型についで多く、発生頻度は10万人あたり5~10人程度とされる。常染色体性劣性遺伝といわれている。発症時期が早いが、特徴的な容貌(顔面筋が弛緩して頬がたれ下がるなど)を示すので、生後9ヵ月ごろには発見される。知的障害を伴うことが多い。

 〔顔面肩甲上腕型(FSH型)〕10歳台になって発症することが多く、男女両性にみられ、常染色体性優性遺伝性とされる。肩甲上腕筋がはじめに侵されるので、上腕挙上ができなくなる。表情変化も乏しくなる。進行がおそいので、高年になっても日常生活に大きな支障をきたさないことが多い。

 〔その他〕 以上のほか「Becker型(B型)」「肢帯型」などがある。B型の予後は比較的よく、また肢帯型も重い障害をみるには発病後20年くらいは経過するといわれる。

 b。神経性筋萎縮症(neural muscle atrophy)一運動ニューロンが起始する脊髄前角または前根が侵され、二次的に筋が萎縮するもので進行性である。予後不良の型とB型筋ジストロフィーのような経過をとるものとがあり、一般に筋ジストロフィーと対応させて考えられる。

 c。重症筋無力症(myasthenia gravis)

 成人になって発症する場合が多いが、一部小児期にあらわれる。運動ニューロンの「神経筋接合部」でのアセチルコリンが、筋の受容体に結合しにくいことによる筋力低下である。眼瞼下垂と眼球運動障害が最もよくみられる。アセチルコリン分解酵素の作用を抑制する抗コリンエステラーゼ剤投与により、改善される。

 d。骨格系障害による運動機能障害一一①ペルテス氏病、②骨形成不全症、③先天性股関節脱臼、④脊柱側彎症をあげておく。①は、主に男子幼児にみられ、股関節部の大腿骨が変形し、脚が開きにくく、また痛みを訴える。②は先天的に骨折しやすい疾患で、下肢や上肢など長い骨に多くおこる。長さはのびても肥大せず、ギブス包帯に頼るので、筋肉は二次的に萎縮する。③は早期発見が徹底したことによって急減しているが、治癒後思春期になって関節部の痛みを訴えることがある、④は、左右の偏りだけではなく、前後方向への彎曲を伴うこともある。乳幼児期の治療で改善されるが進行すると矯正困難である。