脳性マヒのタイプ

 

 脳性マヒの定義として比較的定着しているのは、「受胎から新生児(生後四週以内)までのあいだに生じた、脳の非進行l生病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常である。この症状は満2歳までに発現する。進行性疾患や一過性運動障害、または将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する」(厚生省脳性麻痺研究班、 1968年)という規定である。

 この定義にかんしても、前述のように以前には予想もされなかった「運動障害の将来における正常化」の療育方法が提示され、その範囲や限界に新たな疑問が出されている。脳機能の発達的成熟や可塑性については、脳性マヒの障害を含めて、かりに運動機能に限定したとしても、脳の成熟一発展を基礎とした変化・発展の可能性が秘められているとみるべきであろう。

 ところで、脳性マヒという運動障害がかなり固定化した段階では、一般に次のような病型分類がなされる(アメリカ脳性マヒ学会〈AACP、 1956〉による。なお、解説部分は花田〈1983年〉を多く引用している)。これらの病型は、生後6ヵ月以降になって顕在化する。

 a。痙直型(spasticity)一脳性マヒの50%以上を占めるといわれる。堅く突っぱるコチコチ型と形容される。自分で身体を動かすのが不自由で、他人が手をとって動かそうとしても抵抗する。両膝を内側に交差させ、股の開きが悪い、尖足がよく見られる。独特な指の屈折もある。伸張反射(腱反射)は高進し、クローヌス(間欠けいれん)がおこりやすい。


 b。アテトーゼ型(athetosis)一不随意運動型ともよばれる。脳性マヒの30%ほどである。意図しない不安定な運動が、とくに上肢におこりやすい。そのため幼児期には仰向けの姿勢を好む。このとき非対称性頸反射をとることがある。何かをしようとするとよけいに不随意運動が生じ、ブルブル型と形容される。物をつかむときは、手指をいったん開いてから屈曲させる。筋の状態は、非緊張型と緊張高進型に分かれるが、一般に幼少時には非緊張型、成長するにつれて緊張型へと変わるものが多いとされる。緊張型が、前述の痙直型と異なる点は。睡眠中などではむしろ低緊張であり、意識的動作に入ろうとすると緊張が高まるなどである。重い発語障害や聴力損失を伴うことが多い。

 c。強剛(固縮)型(rigidity)一筋は固いが、鉛管のように受動的に曲げられるとそのままの状態を保つ(固縮)。腱反射異常は認められないが、四肢マヒなど重い運動障害とともに、ほとんどが重い知的遅滞を合併する。

 d。失調型(ataxia)一発現頻度はあまり多くない。立位の平衡が悪いので、歩行獲得前の診断が困難とされる。倒れそうなときに防禦の構えができない。筋緊張は低い例が多い。

 e。混合型(mixed)一以上のいずれかの症状が複合し、とくに幼少期には病型が固定しないことから、このような分類がなされる。脳性マヒの10~20%ほどにあたる。

 このような病型と、脳の損傷部位との関係については、まだ不明のことも多いが、以下のような対応があげられる。

  〔痙直型〕一大脳皮質運動野の傷害を主とする。成人の脳内出血や動物実験による脳破壊では弛緩マヒが優勢となるが、脳性マヒでは、長期にわたる異常運動の固定化と他の運動系神経機構の障害との総合的な結果症状として、痙直のマヒが前面にあらわれると考えられている。

  〔不随意型〕一主として大脳基底核が関与する運動系神経機構の障害とされる。基底核は目的的運動の総合的なプランニングや順序化のような機能をもつ中枢神経機構とされるが、その障害によって他の運動系中枢(例えば基底核内の他の神経核群や脳幹網様体、小脳など)との協調的な運動進行が不成立となるものであろう。

  〔失調型〕一小脳機能障害の特徴をそなえているので、いわゆる「脳性マヒ」に含めないこともある。小脳は、平衡や筋運動感覚、皮膚感覚などを入力しながらたえず、姿勢平衡調整、随意運動の目標にたいする整合、さらに学習された運動プログラムの把持などの機能を果たすとされる。

 重い脳障害では、これらの運動系中枢のどこかに傷害が限定せず、器質的損傷が広範に及んで、運動障害をいっそう重く、複雑なものとする。

  〔運動マヒ〕一つまり、身体各部のマヒがどの範囲にあらわれるかによって分け方がなされる。このなかで、当然ながら、範囲が広がるにつれて障害の程度も重くなり、また他の合併症状もあらわれやすい。