中枢協調障害と脳性運動障害

 

 脳性マヒは、中枢神経系-とくに上位脳の障害に起因する運動障害であるが、障害の発生時期は胎生期から出生後にもわたり、どれだけ早期にその被害を発見するかによってその後の障害の発現にたいする対応のちがいがでてくる。近年、脳性マヒの早期訓練、早期療育の方法が急速に進み、後述のようにマヒが「永続化する」以前の段階で一定程度の「正常化」も期待できるようになった。

 そのような観点を積極的に提示したのが、ボバース夫妻(K。 Bobath &B。 Bobath)やボイタ(V。Vojta)による超早期診断と訓練である。ボイタは「脳性麻痺への発達に対する早期治療は元来、遮断された機能を賦活すること、あるいは解剖学的または機能的に障害された中枢神経系がかくれている病的運動の危険を予防することである。早期治療によってわれわれは、一次的障害(中略)から、二次的中枢神経系障害をさける機会を見つけえた」という。この一次的障害の段階を「中枢協調障害」といい、主として生後にみられる姿勢反射の特異性によって検出される。しかし、このような障害は、決して脳性マヒヘと発展する必然性をもつものではなく、個体の発達過程のなかで相対的に固定化してはじめて、脳性マヒの症状として顕在化するという。中枢性協調障害が固定化する以前の段階(とくに、生後約3ヵ月ごろまで)、障害がまだ初期の発展過程にある段階に焦点をあわせ、早期の発見と治療の手だてを施すことは、その後の障害の発展と固定化を大幅に回避できると考えられる。

 新生児期ないし乳児期初期には、優勢な反射l生の運動機序から急速に脱出して、自ら四肢、体幹、姿勢、眼球位置などを目的的に駆使し、協応させるいわゆる「随意運動」といわれる中枢制御の体制へと劇的に転化してゆく。この交替期までに「中枢性協調障害」をひきだし、対処することが重視されるわけである。「中枢性協調障害」が、病的運動へと展開する段階(4ヵ月以降)は、上位脳の制御がより特定な障害パタンを形成しはじめる時期であって、「脳性運動障害」と称される場合がある。この段階でもなお障害は固定化したものではなく、脳性マヒヘと進む予備的段階と考えられている。

 こういう観点から、障害の早期予知の態勢が重視されるが、そのために中枢性協調障害の原因となる因子(「危険因子(risk factor)」)があげられる。

 ボイタは、中枢性協調障害の有力な指標として七つの姿勢反応をあげ、その半数以上に発達の遅れや異常、不十分さを認めると、①反射性腹這い、②反射性寝返りなどを、積極的にきだすような訓練を実施して、異常の発展の阻止をはかる方法をとっている。またボパースによると、新生児・乳児期には、より未発達段階に相当する原始的反射や姿勢パタンが残存していて、新しく構築される運動パタンの生成を阻害したり遅らせたりするので、この段階で、正常パタンを促進する手だてを強調している。

 運動発達の遅れをもっとも早期に観察できるのは母親である。全身的な様子としては頸定、独り座り、這い這い、立ち歩きなど、部分的な運動としては手指の把握、両手の協応さらに、筋緊張の異常な低下や高進などがある。