ダウン症候群:標準型トリソミー、転座、モザイク

ダウン症候群

 a。名   称-イギリスの医師であるダウン(Down、 J。 L。 H)が、 1866年に「蒙古人型白痴」として報告した。それ以来「蒙古症(mongolism)」という名称が用いられていたが、原因が明らかにされた今日、彼の名にちなんで「ダウン症候群」とよばれている。

 b。染色体の異常一染色体異常症のうちで最も頻度が高い。

 1956年レジューヌ(Lejeune、 J。)らによって本症候群は21番染色体の過剰すなわち21トリソミー(三染色体)であり、染色体数が47であることが明らかとなった。

 ダウン症候群の染色体構成には種々のものがあるが、主なものは表8-3に示すように標準型トリソミー、転座(D/G、 G/G)、モザイクの三種類に分けることができる。

 ①標準型トリソミー

 ダウン症候群の92~95%を占め定型的な臨床症状を示す。

 ②転  座

 21番の過剰染色体がD群あるいはG群に転座しており、染色体数は正常と同じく46本である。頻度は本症候群の3~5%である。臨床症状は標準型と同じく典型的な症状を示す。転座型ダウン症候群では、転座保因者により家族性にダウン症候群が出生することもある。

 ③モザイク

 正常染色体細胞と21トリソミー細胞が種々の割合で混在している。したがって臨床症状は典型的ではなく、知能障害、身体発育障害も軽度である。1~2%を占める。

 c。臨床症状一一身体症状としては顔貌が特徴的であり、短頭で扁平な後頭部、斜め上方につり上がった眼裂、内眼角贅皮(エピカントス)、扁平な鼻根部、扁平な鼻、舌挺出などを有する。筋緊張低下が著しく、臍ヘルニヤ、停留睾丸もしばしぱみられる。身長、体重の発育不全や四肢が短く、ずんぐり型のプロポーションを示す。手指は太く短く、第5指短小・内彎や手掌の猿線がみられる。皮膚紋理(dermatoglyphics)では腕三叉点高位、第2指尺骨側蹄状紋などのダウン症児特有の特徴がある。

 d。合併症-ダ、ウン症候群では種々の合併症を有する。主なものを次に示す。

 ①先天性心疾患

 ダウン症候群の25~60%の割合で先天性心疾患を合併する。心疾患では、心室中隔欠損、ファロー四徴症、心内膜床欠損などが多い。重篤な心疾患を合併する者はけ死亡率が高い。

 ②消化器系の内臓奇形

 巨大結腸症、鎖肛、十二指腸閉鎖など内臓奇形は多く、新生児期の早期の手術が必要になる。

 ③感染症罹患と白血病

 感染免疫機能の低下のためしばしば肺炎や気管支炎などの感染症に罹患する。

 血液疾患としては、白血病の合併が問題となる。ダウン症候群では急性骨髄性白血症が多いといわれる。

 ④眼科的疾患

 眼科的疾患としては、さかさまつげ、結膜炎、眼瞼炎や白内障円錐角膜などがある。さらに屈折異常として近視、遠視および乱視も頻度が高い。斜視は約30%にみられ、特に内斜視が多い。

 ⑤耳鼻科的疾患

 慢性鼻炎、中耳炎などの疾患や聴力障害がみられる。

 ⑥てんかん

 大発作、小発作、点頭てんかんなどが多い。ダウン症候群のうちてんかんを合併するのは約2~4%である。

 ⑦環椎軸椎問適合不全

 頚椎の化骨のおくれや筋トーヌスの低下から、約14~30%に環椎軸椎間適合不全や脱臼がみられる。

 e。出生頻度と寿命-ダウン症候群の出生頻度は、近年の調査では900~1000の出生に1の割合である。また、平均寿命は45~50歳であろうといわれている。

 1。心理的特性一知能障害の程度は、中度段階にあるものが多いといわれているが、個人差がある。

 性格特徴は共通とした独特の特徴をもち、陽気で、おとなしく、人なつつこい、頑固であるなどを示す。

 また言語能力と関係する聴覚弁別の機能に問題があるといわれているが、今後の研究の課題となっている。