「仮性精薄」について

 

 「仮性精神薄弱」とは、知能の発達障害が一次的に存在するのではなく、視覚・聴覚障害あるいは言語障害や環境要因、愛情剥奪(maternal deprivation)等により二次的に知的発達障害をひきおこしている状態をいう。したがってこの場合の知的発達障害は可逆的な状態であり、原因をとり除くことによって発達障害をとり戻すことができる。

 現在では、知的発達障害の概念の規定ではこのような可逆的な発達障害をも含めて「状態」としてとらえようとしているので、「仮性精神薄弱」も知的発達障害に含める方向となっている。

 しかしながら、二次的に知的発達障害を示している場合にはその一次的な原因であるたとえば母親の愛情剥奪など対処しなければならないので、当然のことながら知的発達障害児の対処のしかたとまったく異なった方針をたでなければならない。「仮性精薄」といった概念でくくることより、むしろ知的発達障害児と鑑別診断を行ない、それぞれ子どもの発達障害を引きおこす原因をつかみそれに対処することが必要であろう。したがって、現在では「仮性精薄」ということばはほとんど使用されていないようである。

 1-4。知的発達障害児の治療教育

 知的発達障害児の治療教育、特に医学領域での早期発見にひきつづく早期療育のあり方を示す。

 Tの領域は、医学的管理の領域であり、たとえば、てんかんの治療や心臓疾患のケアあるいは身体の健康管理や栄養指導等が含まれる。月齢が小さいほどこの領域からの働きかけは大きいものとなる。また重度の障害があるほど医療的問題を多く有しており、多くの検査を実施したり治療をしなければならないこともある。しかし、年齢が大きくなるに従ってしだいにIの領域の必要性は少なくなっていく。

 どのように重度の障害をもっていても、またかなり医療的管理が重視される場合であっても、子どもの発達の領域からの働きかけも同時に考えられなければならない。知的発達障害をもつ子どもの発達の領域(Hの領域)に考えられる働きかけには、一つは発達全体を促すための働きかけと、二つには発達の歪み(ある発達領域のみのおちこみ)を改め発達を阻害する要因をとりのぞくことである。前者の領域は広義には養育・保育・教育ということばで表わされる。また後者の領域は、ある特定の目標をある特定の方法により特定の行動を変容させたり、特定の遅れを克服し、促進させることであり・、それぞれの発達障害の病理と深く関係している。これに対処する働きかけを治療教育(療育)と言うことができる。

 実際には、IIの領域を上記のように分けて子どもに働きかけているわけではない。むしろ一般的には、治療教育とは子どもの障害や発達を見きわめながら発達を促す働きかけを意味していることが多い。いずれにせよ、知的発達障害の治療教育の目的は、子どもの全面的発達を促進させることであり、現在では早期から体系的な働きかけが必要であることが強調されている。