知的発達障害の定義と分類

 

 知的発達障害とは、精神遅滞(mental retardation)、精神薄弱(mental defi-ciency)とほぼ同義の語と考えられる。

 知的発達障害の定義としては、しばしば引用されるのがアメリカ精神薄弱学会(AAMD)の定義である。それによると「一般的な知的機能があきらかに平均よりも低く、同時に適応行動における障害を伴う状態で、それが発達期にあらわれるものを指す」と規定されている。一般的な知的機能が平均よりも低いということは、「標準化された知能検査成績が平均より2標準偏差以上低い方へ偏っている」ことであり、「発達期」とは18歳までとされている。適応行動とは、「人がその年齢に応じて、また彼が属している文化集団に照らして期待されている個人的自立と社会的責任の標準に応じるうまさ、あるいは程度」と定義されている。この定義では、原因が何であるかを規定せず現在の状態像が定義の条件を満たしていれば精神遅滞とするものである。ここでは標準化された知能検査、例えばスタンフォード・ビネー検査ではIQ67以下を精神遅滞のめやすとしているが、 IQ67以下であってもその個人が属する集団のなかでの適応行動に問題がなければ精神遅滞とはいわないのである。つまり、精神遅滞を個人と環境(社会)との関連でとらえようとしており、その概念は固定的なものではない。

 これにたいし、 WHOの定義では、精神遅滞とは「精神発達の抑制あるいは不完全な状態であり、特に知能の正常以下によって特徴づけられ、医学的治療や他の特別のヶア、訓練が必要とされ、もしくはその可能性があると考えられる性質、程度のものである」としている。ここではケアや訓練の重要性を指摘していると言えよう。WHOの1968年報告では、精神遅滞の科学的定義を検討しているが、そのなかで知能検査によるIQを基準とする傾向を批判している。つまり、知能検査によるIQのみを重視する考え方は問題であるとし、知的機能は正常以下であるという定義にとどめている。

 ソビエトや東ドイツの定義では、出生前・出生後早期の脳障害による原因が強調されているが、原因そのものの科学的解明は不可能であることが多く、また複数の要因が重なっている場合もあり、原因を規定するような定義では不十分ではないかと思われる。

 現在のところ、状態像としてとらえることと治療、訓練の重要性から定義することが福祉・医学・教育の分野では最も適切ではないだろうか。

 次に、分類にかんしてはさまざまの考え方があるが、ここではWHOによる医学的分類をあげておく。

 0 感染症または中毒症に起因するもの

 I 外傷または物理的原因によるもの

 Ⅱ 代謝または栄養障害を伴うもの

 Ⅲ 出生後に起こる粗大脳疾患によるもの

 Ⅳ 不明の出生前要因によって起こる疾患に伴うもの

 V 染色体異常を伴うもの

 VI 周生期疾患によるもの

 Ⅶ 精神医学的障害に起因するもの

 Ⅷ 環境の影響によるもの

 Ⅸ 他の条件によるもの