筋緊張・収縮と固有受容感覚

 どんな感覚も、生体にとってはそれぞれ重要な役割をもっている。とくに感覚障害があれば、他の感覚機能への依存性がたかまり、重要性がいっそう増してきて、感覚内容も豊富になってくる。したがって、簡単に各種(が極覚の軽重を論じるのは適当ではないが、ここでは、とくに発達過程のなかで、時には主導的役割さえももっているような主要な感覚にかぎって述べることとする。

 

 筋緊張あるいは筋の収縮、伸張の直接的な受容器として、筋紡錘(musclespindle)と腱器官(tendon organ)がある。とくに筋紡錘は、筋の伸張という機械的刺激にたいして閾値が低く、感度がよい。筋紡錘からスタートする感覚神経にはグループIa (G I a)、グループn(GII)があり、 G I aは、伸張反射を生じる。伸張や収縮が極度に強まると、腱器官が興奮し、そこから発するグループIb (Gib)のニューロンが活動して、伸張反射を抑制するように作用する。つまり、極端に強力な筋緊張のさいに、筋の断裂を予防するはたらきをする。

 筋紡錘には、そのなかにある筋組織につながる運動性のニューロン(カンマ・ニューロン)が遠心性に支配しており、筋紡錘の長さを自動制御しているので、いわゆるバイアスがかかった状態となり、実際の筋の伸張とはある程度独立に、筋紡錘のみで、その興奮レベルを上下させることができる。感覚器官自体の感度が自動的に調節されるわけである。円滑な運動の実現には不可欠の感覚である。

 骨格がどれだけ屈曲ないし伸展したかを伝える他の重要な感覚器として、関節受容器(joint receptor)がある。その本体は不明の点もあるが、関節を包みこむ関節包に点在する受容器とされており、関節の動きの方向と大きさ、その速さなどの情報を中枢に送り込む。ひとつひとつの関節受容器が応答できる関節角度の変化範囲は狭いが、きわめて敏感に反応するので、受持ち範囲のことなる複数の受容器が集団となって、関節角度を非常に正確に知らせることができる。それらを支配している神経が麻痺すると、身体の位置や運動の見当が大きくはずれてしまうことがあるので、先の筋紡錘とともに、固有受容感覚のなかで有力な情報源であることは確かである。新生児の運動・姿勢の発達のなかでも、この感覚の重要性が指摘されている。