健康保険の不正請求をする医者たち

 

 尾藤さんの言うようなチェック機能を日本の健康保険組合で果たしてくれるのなら、患者としても願ったりかなったりだ。なにせ、日本では95年度の診療報酬明細書(レセプト)再審査で、3222億円もの不正請求があったことが発覚した。しかも、多かれ少なかれ不正請求する医師がほとうなっていくのかは、株をもっている人たちや証券会社にとっても大いに興味のあるところ。山一証券経済研究所企業調査部(元)の医療品業界担当主任の小池隆由さんは、与党医療保険制度改革協議会の最終報告を受けて、顧客向けに今後の予想をシミュレーションした。

 

 「今まで薬価の改定は2年に1度だったのですが、97年4月に消費税の引き上げにともなって薬価の改定が行なわれ、ここのところ毎年薬価の改定が実施されています。2000年度に実施される医療保険改革の目的は、介護保険と高齢者医療保険制度の創設による新たな財源づくりと医療財政の合理化です。おそらく、このまま2000年まで毎年薬価が改定され、毎年平均2~3%の薬価の引き下げがなされるでしょう。そうなれば、2000年までにRゾーン(一般価格幅)がOから3%まで縮小され、薬価差がほとんどなくなる。それによって過剰投与を抑えることが行政の狙いです。

 

 ICH-GCPガイドラインの導入や新薬価制度によって、かなりの数の製薬会社が倒産や合併に追い込まれるのではないかと予測する人もいますが、私はそうは思いません。なぜなら、欧米で開発された薬で日本で売れるものはもうすでに入ってきているので、突然欧米の薬ばかりになることはないから。それに、新薬価制度は一見ドラスティックな改革のように見えますが、実際は現在の薬価基準制度の延長線上にあると考えるからです。

 

 大改革のように見せかけるのは、毎年1兆円ずつ増えっづける医療費の削減を図るために国民にもかなりの負担を強いるので、薬価差で医療機関がもうけているという印象を与えている薬価基準制度を廃止して、世論を納得させるためです。上限価格は厚生省が決めるわけですし、実勢価格を無視した価格の設定もできないわけだから、今の薬価制度と何も変わらない。特にマーケットを左右する新薬を持っているような大手の製薬会社には、ほとんど影響がありません。ただ、薬価差がなくなって、今まで経営を薬価差に頼っていた医療機関が困るだけでしょう」