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白血病治療の選択基準

 

  どのように考えて骨髄移植実施の決断を行うべきかという問題を考えてみます。慢性骨髄性白血病や再生不良性貧血のように、ある程度の時間的な余裕があり、現状の生活がある程度のレベルで維持できている場合にも、移植をいつ行うか決断が必要です。移植により五年の生命を一年に縮める危険もあるからです。またすでに述べたように、第一寛解期の急性白血病のように、化学療法との治療効果の差があまりない場合の決断もたいへん難しい問題です。

 

 これらは、患者さんの年齢によっても大きな違いがあると思います。それぞれの年代により固有の生活を持っていますから、ディシジョンーメイキングの条件が異なります。二十代、三十代の方ですと、恋人や結婚、家族の問題、自分の子の養育責任の問題があると思います。四十代になれば自分の職業的、社会的責任をどう果たすかという問題があります。一方、小児はGVHDが少なく治療成績がひじょうによく、強い治療に耐えられるといった点を考えると、骨髄移植は子どものほうが対象となる範囲が広いといえます。同時に子どもの場合は、もし治療した後の数十年間の人生を考えに入れなければなりません。

 

 骨髄移植の成功率が上昇するにつれて、単に生命を維持するのみでなく、今後は骨髄移植後の生存の質を考慮しなければなりません。移植後に拒絶され、再移植に成功したものの、放射線の影響で慢性の肺疾患になってしまい、在宅酸素療法を必要とする形で長年生きていかなければならない場合もあります。GVHDは恐ろしい副作用で、全身の皮膚が剥けてしまうような写真を見たことのある方は、とても不安になると思います。慢性のGVHDは一種の膠原病ですから、たとえば皮膚がこわばるとか、眼が乾く、口が乾く、あるいは眼が乾いて眼に潰瘍ができるとか、肝臓や膵臓などのいろいろな慢性臓器障害が起こってきます。子どもの場合は、これから成長、発達しなければなりませんが、身長の伸びが少ない、毛髪が薄い、甲状腺機能の障害、生理がこない、などの身体的な問題が起こるかもしれません。

 

 大きくなって結婚できるだろうか、子どもは作れるだろうか、結婚相手に説明できるだろうか、進学・就職に不利はないだろうか、などの心理的・社会的問題もあります。

 

 このような、さまざまなことを念頭において、移植に踏み切るという決断を迫られるということになります。もしも困難な事態に遭遇したとき、本人も、親も、主治医としても「自分たちの決断は間違っていたのではないか」という後悔にさいなまれるかもしれません。もちろん化学療法にも、程度は軽いながら同様の副作用があることも事実です。

 

 骨髄移植は、生命を救うことを当面の目的とした治療から、安全性や確実性を増した、より精選された治療法へと発展しなければなりません。

 

 今後、急性白血病では、化学療法の発展により、骨髄移植の役割は限られたものになる可能性があると思われます。また、骨髄バンクが機能し始めて治療の選択の幅が広が゜た分だけヽその ″選択にはきびしい決断を迫られる場面が増えてきます。患者さんも、主治医や移植医から十分な情報に基づいた納得のいく説明を受けて、ディシジョンーメイキングを行うことが重要になるでしょう。

 

 これまでの血液疾患治療によって得られたデータをきわめて綿密に分析していくことによって、それまで骨髄移植がベターであるとされてきた疾患についても、実は化学療法と変わらない成績であったり、むしろ化学療法のほうが骨髄移植よりも成績が良いという分析結果があるのである。

 

 骨髄移植を行うことによる、比較にならない副作用の厳しさと、数々の合併症の危険性を考えると、化学療法によって治癒が可能なものであるならば、当然、化学療法を選ぶことが得策であるといえるだろう。骨髄移植の治療法もものすごい勢いで進歩をしているのであるが、化学療法も間違いなく飛躍的な進歩を遂げているのである。

 

 病気の治療とは、ただ生存していられれば良いというわけでは決してない。病気が治るか否かを大前提に考えるのは当然のこととして、考えなくてはならないのは、どのような過程をたどって治るのか、またどのようなかたちで社会復帰できるのかという問題である。その質も検討しなくてはならないことである。

 

 これは決して「骨髄移植か化学療法か」の二者択一を迫るものではない。その他にもまだまだ治療の手段はあるのである。骨髄移植にも血縁・非血縁のほかに自家移植という選択肢もあるし、自家移植のもう一つの方法に末梢血幹細胞移植という治療法もある。それでは、末梢血幹細胞移植とはどういうものであろうか。この治療法の権威である徳島大学の高上医師にくわしくご説明いただこう。