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説明書には書かれていない「使用上の注意」

 

正しく飲まなきゃ正しく効かない

 

 いくら指示どおりに服用するよう注意していても、たまにはミスだってある。[1日3回・食後に服用]となっているのに食後数時間してから飲み忘れに気づいてしまったとか、「食間に服用」を「食事と食事の間」ではなく「食事の最中」だと勘違いしてしまったりだとか、そんな経験のある方も多いことだろう。

 

 市販薬にしろ処方薬にしろ、クスリの説明書というのは誰でも理解できるよう簡潔になっている反面、簡潔すぎて細かなQ&Aに対応しきれていないものが多すぎる。クスリ同士の飲み合わせによる深刻な副作用や、特定の食物と同時摂取することで危険が生じるクスリ(血栓治療薬のワーファリンは納豆によって作用が弱まる)などの場合にはもちろんちゃんとした注意がなされるが、それ以外の「深刻ではないが知っておいたほうがよいこと」についてはあまり説明がなされていないそうした細かな知識について少々ふれてみよう。

 

 まずは基本的な事柄から。飲み忘れたからといって次回服用時に倍の量を飲むのは絶対にだめ。効き目の強い処方薬はもちろんのこと、100錠単位で飲まなければまず死なないように作られている市販大衆薬も、必らず用量を守るように。私かでたらめな量のクスリを摂取しているのは「早死にしてもいいからクスリの効果を」というヤバい考えによるので、絶対におすすめできない。必要以上のストックを買い込むのもやめよう。表示された品質保証期間内で使い切れる、最低の量だけをそろえておくように。

 

 ある男性は「いつ病気してもいいように、クスリの買い置きは万全にしてある」などと自慢していたが、使いもしない量のクスリを悪質な環境下で長く保管していたため、「極度の下痢に襲われてクスリ箱を開けてみたら、止瀉薬(下痢止め)が全部カビていた」という笑うに笑えない憂き目に遭ったそうだ。

 

 「水または白湯で服用」と指示されている場合はできるだけ守るようにしたい。服用時の飲み物だけでなく、食事に関しても注意が必要だ。胃酸に弱いクスリを乾きモノの食事と共に服用すると、胃内での残留時間が長くなって効き目が落ちるし、逆にできるだけ長く胃にとどめておくべきクスリをスープや粥などの液状食物とともに摂ると、胃で溶けきらないうちに腸へ流れ込んでしまう。また、吸収の度合い・効果が弱まるケースだけでなく、血圧の降下に用いられるカルシウム拮抗剤のようにグレープフルーツとの飲み合わせで効力が増強されるものもある。

 

 もっとも気をつけるべきなのがアルコール。食前酒として用いられるように胃の栄養吸収を高める効果があるので、クスリの回り方が早くなってしまうのだ(一部、アルコールによって作用の弱まるものもある)。

 

 「クスリは牛乳で飲むのがいい」という通説をやみくもに信用して、なんでもかんでも牛乳で飲み下すのも問題である。確かに、アスピリンなどのように胃を荒らしやすいタイプのクスリならば牛乳による服用はメリットがある。しかし、「牛乳は胃壁をコーティングするから胃薬といっしょに飲むといい」などというのはまったくのまちがいだ。「マー囗ツクスプラス」のようにクスリそのものが胃壁コーティング用に開発されているものもあるが、一般的な胃薬は当然ながら「胃壁からの吸収」を目的としているので、牛乳でコーティングしてしまうと効き目が落ちる。お茶についても、高温やカフェイン、ビタミンなどの成分に悪影響を受けるモノが多いので事前に確認が必要。

 

 薬物というのは案外デリケートな構造をしているので、いくら「食後に服用」とあっても、熱い鍋ものを食べた直後に服用するのは避けたほうがよい。「食後30分以内に服用」となっているものが多い理由のひとつは、食物の温度による影響を考慮しているためだ。心配性の人は、クスリの服用期間中どんな食事を避けるべきか、どんな食事を心がけるべきかを医師に相談してみるのがよいだろう。

 

『知らなかった医薬品業界』造事務所著より