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誰も知らないクスリの正しい服用法:芳香性苦味健胃薬

 

 末期ガンの痛みや疼痛を緩和するために使われるモルヒネは、従来は投薬に際して細心の注意が必要とされていたのだが、徐放性錠剤の開発によって危険性が大きく下がった。モルヒネ錠剤の場合は、放出制御用の物質で作られた錠剤内に、小さなモルヒネ粒を何段かの碁盤状に配列したマトリクスタイプが用いられている。

 

 このように、クスリの形状や大きさには正しく服用してこそ本来の効果を発揮する、いくつもの知恵が盛り込まれているのだ。腸内で溶け出すタイプのカプセル剤をかみ砕いてしまったら胃の中で顆粒になってしまうし、徐放性錠剤の場合も、飲む前に形が崩れてしまうと複数の成分が一度に放出されてしまう。クスリをかみ砕くのだけはやめたほうがいい。ただ、糖衣やカプセルの色は薬理効果などと一切無関係。薬物そのものの色は別として、外装用のカラーリングは単に薬剤師や医師、患者がクスリをまちがえないための識別用のものでしかなく、ほとんどは食用着色料などによって彩色されているのだ。胃腸内で溶けた結果、これらの着色料は当然食物の消化・排出中に混ざり合い、便の色を変えたりする。便の色というのは食べたモノによって変わってくるものだし、クスリの色に影響を受けるのも当然といえるだろう。また、着色料によるものだけでなく、クスリが強いために軽い腸内出血(ほとんどは実害のない一過性のもの)で赤い便が出たりというケースもあるのだが。実はこれも立派な副作用。害を与えたりする性質のものだけでなく、本来の服用目的に無関係な症状はすべて副作用と呼ばれるのである。もちろん便の色が変わるだけなのだから気にする必要などまったくないのだが、ときおりなにか異常が起きたのではと勘違いしてあわてふためく患者も多いとか。

 

 ある医師から聞いた話によると、「ラキサトール」という下剤を飲んだ女性患者が副作用による赤い大便に驚き、病院へと駆け込んでわんわん大泣きしてしまったという事件もあったそうだ。突き放すようではあるが、体内に異物を取り込むのだから、クスリを飲めば当然なにかしらかの影響が出るわけだし、その影響が病気を治すものだけであるはずもない。重いものであれ取るに足らないものであれ、無関係なところに影響が出たとしてもこれは当たり前といえるだろう。そりゃあただでさえ病気で参っているところへいきなりおかしな色の便が出てしまったら困惑するかもしれないけれど、それがあらかじめ予想された結果であるとの説明を受けたなら、たとえ何色の便が出ても「イチゴ氷を食って舌が赤くなるようなものだ」と気楽に考えたほうがいい。

 

 まちがっても「こんな色の便はいやだ。ほかに色のついたモノを食って打ち消そう」だなんてバカな考えは起こさないように。子どもが嫌がるからといって、顆粒薬をオブラートに包むのもほんとうはいけない。包んでしまうとオブラートによってすばやく吸収されなくなってしまうためクスリの効き目を弱めてしまうのだ。30歳近いというのにいまだに顆粒薬・粉末薬をオブラートで包んでいる知人にこれを注意したところ、彼はオニギリの中にふりかけよろしく胃薬をまぶすという荒業に出た……。

 

 芳香性苦味健胃薬といって、胃散薬の中には苦味やメントール性の刺激によって胃液の分泌を盛んにしたり、食欲を増進させたりするタイプのものが多いのだ。「新三共胃腸薬」などのように、飲んでスカッとするタイプの胃薬がそれである。これをオブラートで包んでしまうと、ただ吸収が遅れるだけでなく、舌や胃が刺激を受けないために効果が半減してしまう。

 

 

 

『知らなかった医薬品業界』造事務所著より