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映画『レオン』ゲーリー・オールドマンの服用法を真似するヤツ

 

インフォームドコンセントが叫ばれる中、患者は自分のクスリについて多くの情報を得られるようになった。しかし得られた情報の意味がわからなかったら、どうしようもない。知っていなけりゃヤバイのに、あまり知られていないいくつかのこと。んだあと、 中でクスリはどうなっているのか

 

 映画『レオン』で、ゲーリー・オールドマン演じるヤク中の麻薬捜査官がカプセル剤を飲むシーンがある。ポケットから取り出した小さなピルケースを耳元でカチャカチヤと揺すり、中のカプセルをくわえ、天井を見上げる。「カリッ」とカプセルをかみ砕く音が響き、即効性のドラッグなのか全身をブルッと震わせて恍惚の表情を浮かべる……。イカしててイカれてる雰囲気がウケてしまい、本書ライターの周りではこの飲み方が大はやりしてしまった。そういえば、以前は大友克洋のマンガ『AKIRA』に触発されて、不機嫌そうな顔でカプセルをガリっとかみ砕いていたし、どうもこの手のモノに影響されやすいようだ。もっとも薬剤師に言わせれば、こうした服用の仕方は言語道断だそうで、いくら格好いいからといってマネしてはいけないとのこと。いい加減でデタラメな飲み方ばかりしているため、私はしょっちゅう知り合いの薬剤師から叱られている。

 

 そうはいっても格好いいものはマネしたいし、飲み薬なんてどう服用したって腹の中に入れてしまえばそれでいいじゃないかと、そう愚痴をこぼしたら、さらに大目玉を食らってしまった。

 

 タブレット糖衣錠、カプセルなど、クスリの形状にはしっかりとした意味があり、定められた用法どおりに飲んではじめてその効果を発揮するよう、さまざまな知恵が盛り込まれているのだ。

 

 たとえば錠剤と散薬・顆粒薬を比較した場合、前者は胃腸内で徐々に溶けてゆっくり吸収され、後者はすばやく溶けてすばやく効果を発揮する。滋養強壮ドリンクが液体なのも、吸収を早くして飲んですぐ元気になれるようにと考えてのことだ。多忙な消費者を考慮してか、最近は即効性重視の液体型風邪薬(ルルかぜ内服薬)や液体型胃薬(キャベ2など)も人気が高い。さらに錠剤タイプのモノでも、薬品の性質や目的によってその形はさまざま。まず、もっとも構造の簡単なのは裸錠(いかにも粉を固めただけといった質感のタブレット。「バフアリン」など)。小児用に飲みやすくするため、またはクスリそのもののにおいや味をごまかすためにショ糖で覆った「ベンザエース」のような糖衣錠。糖衣の代わりに高分子膜で周囲を覆ったフィルムコート錠。

 

 これらのものはだいたい、胃の中で溶けるように作られている。腸からの吸収を目的としたものの場合だと、胃内で有効成分が溶け出さないようアルカリ性(胃内が酸性であるのに対し腸内はアルカリ性。ほかにも「胃で吸収させるか、腸から吸収させるか」の判断にはクスリごとにさまざまな要素がからむ)の物質でのみ溶けるセルロースでコーティングしたり、皮膜を多層化するなどの工夫が図られている。目的の部位で外殻が溶解すると同時にすばやく吸収させるという場合には、カプセル剤やソフトカプセル(密封性が高く柔軟なので、中に液体薬を封入できる。風邪薬の「ストナージェルカプセル」など)などが用いられるといった具合。

 

 もちろん、大きさにだって意味がある。「1回2錠服用なんだったら25mg錠2個じゃなくて50mg錠1個にしてくれればいいじゃないか」と考えてしまいがちだが、大きくなると溶けるのにもそれだけ時間がかかるわけで、「どの大きさにわけるのがもっとも効果的か」が考えられているのだ。ちなみに裸錠タイプのクスリで表面にマイナスのネジに似た1本線(割線)が刻まれているものをよく見るが、あれも装飾ではなく、小児に投薬するときなどに二分割しやすくするためのもの。

 

 さらに近年ではクスリの製造技術が発展したために、ほかにも変わった形態のものが多数開発されている。混ぜ合わせると化学反応を起こしてしまう2種のクスリを、2層タイプの複合錠剤にしたものなど当たり前。このような細かな加工が可能となったおかげで、1錠内に含まれる複数の成分が、時間をズラして別々に溶け出すよう工夫された徐放性錠剤なるものまで登場した。徐放性錠剤にもいくつかの種類があって、もっとも簡単なのは「後から効く成分」を即効性成分で覆ったロンタブタイプ。複数の成分をマーブル状に固めたスパスバスタイプ(喘息薬の「テオフィリン」や狭心症の「塩酸イソソルピト」などに使用)。腸内での溶解・吸収を目的とした糖衣錠の上に、胃内で吸収させる成分をもう一つ糖衣コーティングで重ねたレペタブタイプ(複効錠)。

 

 変わったものだと、極小の粒をプラスチック基板に詰め込んで表面をコートしたグラデュメットタイプなんてものもある。貧血治療用の鉄分剤などに用いられているもので、中のプラスチックはクスリを放出した後、便とともに排泄されるしくみだ。

 

 徐放性錠剤のメリットのひとつは、クスリの溶解・吸収のタイミングを細かくコントロールすることで服用の間隔を長くできること。考えてみれば、医師や看護婦によって生活リズムをきっちり管理されている入院患者は別として、働いている人間が1日3回正確にクスリを服用するというのはなかなかに難しい。実際問題、毎日正確な時間に3食をとれるサラリーマンがいったいどれだけいるだろうか。また、クスリの効き目を安全性ギリギリまで強めることなく、長くゆっくりと効くようにコントロールすることには、ただ「1日2回飲めばいいから楽」というだけでなく、中毒を起こしやすいクスリを安全な範囲内で少しずつ吸収させるというメリットもある。