医療英語の翻訳会社BEST3

医学論文・治験文書・症例報告書・医療機器マニュアルなどの英語翻訳サービス

財団法人がボコボコとできるわけ

 

 医薬品機構は、医薬品についての情報公開へその業務を広げつつある。もともと、同じように医薬品の情報に関連している厚生省関連の財団法人が3つもあるのにだ。

 

 そのひとつは、「日本医薬情報センター(JAP-C)」。

 

 製薬会社や医療機関などの会員が出資し、日本中で売られている薬の取扱い説明書「添付文書」をデータベース化し、本やCD-RoMにまとめている。

 

 次に、「医療情報システム開発センター(MED‐sIDc)」。

 

 こちらは厚生省と通産省が、保健所や医療機関のシステムから人工知能に至るまで先端的な医療情報システムを開発するために一J一一年に設立した財団法人だ。医薬品情報に関しては、JAPIcの構築した医薬品の添付文書のデータベースを個別の医療機関などのコンピュータで使いやすいように加工してオンラインで流したり、医薬品コードの標準化を図るなどの事業を展開している。また、日本薬剤師会が街の薬局で買うことができる一般薬の情報や医薬品副作用データなどを提供しているパソコン通信も、実際はMEDIs-Dcが行なっているのである。

 

 そして、残りのひとつは「日本公定書協会」。

 

 厚生省が医薬品に関する調査研究や調剤薬局が取り揃えていなければならない基準薬「局方品」についてのデータベースの構築とメンテナンス、添付文書の使用上の注意の改定文書を定期的に郵便で送ることをおもな事業としている。

 

 この3つの財団法人だけでさえ、それぞれが製薬会社から資金を調達したり、国の予算を使って委託事業を行なったりしている。いっそ一括して医薬品情報を扱うひとつの団体にししまったほうが効率がいいのではないかという意見が医薬品業界でもささやかれているほど。’そこへ、医薬品機構までが医薬品に関連する情報の提供に事業の幅を広げようというのでは、情報を提供する側も情報を利用する側も非常に効率が悪い。

 

 しかし、厚生省は、細々と分業化された仕事を担う財団法人を次々に作り、自分たちの手中にある医薬品機構の仕事を増やすことばかり考える。なぜなら、答えはひとつ、退職後の天下り先を確保するためである。

 

 試しに調べてみると、JAPICへの天下りはいないが、MEDIS-DCの理事長は厚生省OB、専務理事と事務局長は通産省OBと厚生省のOB、3つある部の部長はすべて厚生省と通産省の0Bや出向者で占められている。また、日本公定書協会は、会長以下18人もの役員の下に19人の職員で成り立つ頭でっかちな団体で、その役員のほとんどと事務局長は厚生省からの天下りというありさまなのだ。多少乱暴ではあるが、3つの団体を医療関係の情報を扱う法人としてひとつにまとめ、役員の数を減らすだけでも医薬品情報のための予算を効率的に利用できそうではないか。しかし、その音頭をとる立場にある厚生省はそんなことは絶対にしない。たとえば高齢社会対策で他省庁と同じような内容の事業で予算を確保しても、効率よく省庁間の連携を図ることはおろか、次の年に予算が減らされないように何がなんでも使ってしまおうとするのと同じことだ。天下り先を作るのには熱心でも、再編成や財団法人をつぶすことなどまるで頭にないに違いない。

 

 なにしろ、こうした財団法人は、製薬会社や医薬品卸企業に再び天下っていくトンネルの役目を果たすオイシイ場所。厚生省から製薬会社などへの直接の天下り国家公務員法で禁止されているものの、2年以上こういった財団法人で猶予期間を過ごせば、再び財団法人からの多額の退職金を手に大手を振って民間企業へ天下っていけるのだ。もちろん民間企業を辞めるときにも多額の退職金を手にするわけだから、厚生省、財団法人、民間企業、と退職金の3重取りをすることになる。

 

 ここで挙げた財団法人とは関係がないが、薬害エイズでその罪を問われたミドリ十字の松下廉蔵・元会長も、厚生省薬務局長を最後に退官後1年で日本製薬工業協会理事長、その3年後にはミドリ十字の副社長におさまり会長まで階段を駆け上がっている。同じように最後の天下り先として製薬会社を思い描いている官僚たちに、薬害をなくすための情報公開、医薬品の審査の強化を望めるのかは大いに不安が残る。しかし、医薬品審査を監視しようという「医薬品ビジランスセンター」(浜六郎代表)、市民による市民のための医薬品監視機構「薬害オンブズパースン」(鈴木利廣代表)など、悲惨な薬害を二度と起こさないための活動も広がってきている。

 

 国民のことより製薬会社の利益を考える今までの体質を引きずっていたのでは、厚生官僚だって、薬害の被害者になる可能性があるのだ。また、医療関係者も積極的に副作用を報告していかなければ、自らの手で薬害を広げてしまう恐れがある。まずは情報をオープンにし、不都合な情報を隠そうとする企業に立ち向かうくらいの姿勢が、官僚にも、医療関係者にも、そして国民にも求められているのではないだろうか。

 

『知らなかった医薬品業界』造事務所著より