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日本の薬はアメリカの10倍あぶない

 

われわれはメイド・イン・ジャパンに信頼を抱いている。しかし、薬に関してそれを抱くのは危険きわまりない。

 

 まず、厚生省には、薬の副作用はどうやって報告されているか。

 

 国内の副作用情報を扱うのは厚生省・医薬安全局・安全対策課。医療機関、薬局(保険調剤薬局)と製薬会社から報告がいくことになっている。97年7月以降は、血液製剤によるエイズ禍など一連の不祥事で薬務局が廃止され医薬安全局になった。この組織改革をきっかけに、すべての医療機関と薬局が副作用報告を行なうことになった。なんだかあたりまえのようだが、以前は、副作用を厚生省に報告するのは、あらかじめ指定を受けた約3000の医療機関と2700強の薬局だけだったのだ。

 

 製薬会社はどうか。

 

 自社の製品に副作用が起こった場合、必ず安全対策課に報告しなければならないことが薬事法に定められている。ある薬を使って患者が死に至った。重い障害を引き起こすような症例が出て、それがまだ使用上の注意に載っていないものだった。そんな場合には、とにかくわかった時点で安全対策課にファクスか電話で第一報を送らなければならない。そして15日以内にくわしい報告書を送る。重篤でもすでに使用上の注意に記載されているようなものだったり、死に至るほどではないが軽微ではないものは30日以内に報告することになっている。

 

 海外で起こる副作用もある。これについては、WHOの国際医薬品モニタリングセンターやアメリカ食品医薬品局など各国の厚生省にあたる機関からの報告や学術誌などから、情報を得ている。

 

 注目すべきはこれまで国内の医療機関からの報告の異常な少なさだ。たとえば2989軒がモニター施設に指定された96年度の場合、報告された副作用はたったの1914件で、I施設1件にも満たない。それなら日本ではそんなに副作用が少ないのかといえば、その答えは「ノー」である。

 

 その証拠に報告が義務づけられている製薬会社からの96年度の報告はナントー万6831件!医療機関からの報告の8倍以上の数の副作用が報告されている。ちなみに、海外の副作用報告結果を見ても、日本ほど医療機関による報告の少ない国は珍しい。95年の数字で比較してみよう。

 

 日本での副作用報告は医療関係者によるもの1859件、製薬会社1万4288件。イギリスでは医療関係者1万5500件、製薬会社2300件。フランスでは医療関係者1万3670件、製薬会社1万4000件。アメリカでは医療関係者3万件、製薬会社12万件。

 

 アメリカと日本の医療関係者対製薬会社の報告の比率は似ているが、数を見るとそれぞれ10倍近くアメリカのほうが多いのだ。

 

 日本の医療関係者、つまり医師や薬剤師は副作用に関心がないのか。

 

 国立病院に勤める、ある医師は言う。

 

 「われわれ医師、特に大学病院や国立病院の医師というのは、非常に珍しい特別な事例については学会報告のために一生懸命報告するけれど、すでに知られている副作用についてはあまり重要視しない傾向があるのだと思います。正直言って医師の仕事はいそがしすぎて、ボランティアでそんなことをしていられないという面もありますし……」

 

 

 副作用の報告はボランティアなのか?・ 金にならない仕事は、後回しなのか?・ ある製薬会社の安全性情報担当者は医師の側の事情を次のようにもらす。

 

 「副作用としてわれわれに報告されるもののなかには、薬の副作用か医療事故かわからない事例もけっこうあるんです。製薬会社に薬の副作用と報告されても、あきらかに医療ミスと見られる症例もあります。企業は、自社の薬と因果関係があるなしにかかわらず、重大な副作用が起こったらすべて報告しなければなりませんからそういうものでも報告しますが、医師のほうは医療事故の発覚を恐れて報告しないことも多いのが実情です。場合によっては、副作用報告をしたことが、医療事故訴訟の不利な証拠となる可能性だってないとは言えませんからね」

 

 薬害をなくそうと必死になる医師がいる半面、副作用報告はボランティアなのでついつい優先順位が低くなる。医療ミスが発覚するのを恐れて、副作用情報を厚生省に報告することをあまり重要視していない医師が多いことも事実だろう。しかし、いくら企業からの報告が1万6000件以上あっても、「メーカーからの報告はいくら客観的に書こうとしても、メーカーにはあまり非がないような書き方になりがちです。同じ症例について医療関係者からの報告があってはじめて客観的なものになると思います」とある製薬会社の担当者も指摘する。薬害による犠牲者を減らすためには、医療関係者からの報告がもっと多くなる必要がある。

 

『知らなかった医薬品業界』造事務所著より