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「新しい薬があるんだけど・・・」という医師の言葉の意味

 

 私たちが被験者になったとき、どんな経緯で臨床試験を受けることになるのだろうか。実際の臨床試験の流れを見てみよう。

 

 アメリカでは新聞広告などで臨床試験の参加者を募るが、日本の場合には、ほぼ99%が臨床試験のことを担当の医師から聞かされる。まず最初に、担当医からその薬の効果とどういう副作用があるか、その後どういった検査を受けることになるか説明を受けるわけだ。ほとんどの人は、今まで薬の副作用の説明などあまり受けてこなかっただろうから、いざきちんと説明を受けると、将来、薬となるかもしれない試験物のあまりの副作用の多さに面食らうことになる。怖くなったり、家族に反対されて断わるということもあるだろう。しかし、どんな薬も毒性があるのが当たり前。本当の意味での新薬は、人類の財産であり、自分や同じ病気の患者たちを助けることになるかもしれない。その試験物を飲むことのメリットとデメリットを比べて、メリットのほうが高ければそれを飲んでもいいというふうに冷静に判断することが必要だ。

 

 たとえば、まだ治療薬のない病気の場合には、その試験物にかけてみるという選択もある。わからないことや不安に思うことはいろいろ質問して、それでも「そんな薬、今までの薬と何か違うんだ!」と思った場合には、お世話になった先生に頼まれたことだからなどと医師に義理立てなどしないで、きっぱり断わる勇気も必要だろう。

 

 フェーズ3では、「二重盲検試験」というプラセボ(偽薬)を使った試験が行なわれることが多い。開発中の試験物とすでに効果が確定してる薬とを比べるのだ。どちらを飲むことになるのか患者にも医師にもわからない、二重に目隠しされたような状態で比較試験をするから「二重盲検試験」と呼ぶ。こういった試験をするのは、薬を飲んだときには、精神的なもので治ることもあるから。「開発中の画期的新薬」などと説明されてそれを飲んだ患者が、そう思い込むことで病気を回復させてしまうことだってあることを考えると、どちらかわからず飲んだものを比較して、既存の薬より「有効性が高い」というデータが出れば、見事、新薬として日の目を見ることができるのだ。

 

 そういった「二重盲検試験」の説明も含め、あらゆる説明を受けた後、もし臨床試験に参加するのであれば、説明を受けたことに同意するサインをすることになる。

 

 その後は、普通の薬と同じようにその試験物を飲んだり、注射されたり、点滴を受けたりする。臨床試験は試験物を投与した後の経過を見る必要があるから、外来であれ、入院であれこまめに血液検査や尿検査を受けて体の変化をチェックされる。そのとき、「吐き気がする」とか「頭が痛い」などというちょっとした変化も報告するようにする。それが重大な副作用の前ぶれかもしれないし臨床試験に携わる医師や看護婦はそういった患者のちょっとした訴えも、その試験物の副作用であるかどうかにかかわらず、データに残しておかないといけないからだ。

 

 このような3段階の臨床試験で安全性と有効性が確かめられれば、晴れて新薬として厚生省へ申請される。それが中央薬事審議会の認可を得てはじめて、「薬」として売り出されるというわけひとつの化合物が発見されてから、新薬として承認されるまでには、軽く10年から20年の歳月が流れる。そしてひとつの薬の開発に100億から200億円という資金がつぎ込まれているのだ。製薬協の調査では、96年までの5年間に承認申請された化合物の数は106個、はじめに合成または抽出された化合物が32万832個だったから、実に3027分の一の確率で難関を突破した化合物である。今ある薬とたいして変わらない試験物の臨床試験へ参加する患者の同意が、得られにくくなる現実を考えると、これからはこの確率はもっともっと低くなることだろう。

 

『知らなかった医薬品業界』より