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悪は強し、医者へのワイロは永遠に不滅です

 

 95年11月、元熊本大学医学部付属病院講師の国立熊本病院内科医長が、参天製薬から、血圧降下剤「SD3211」の臨床試験に便宜を図った謝礼として、93年の2月と6月の2回にわたり、現金百数十万円を銀行振り込みで受け取った疑いで逮捕された。

 

 また96年11月には、京都大学医学部付属病院講師が、筋肉の異常な緊張でまぶたが開かなくなったり、手の震えが止まらなくなったりする神経系の難病「ジストニア」の治療薬の開発にからんで、外資系の医薬品販売会社から、93年に100万円、94年に60万円を臨床試験の論文の原稿料などとして受け取っていた疑いで逮捕された。この講師は記者会見で、治験状況の検討のために東京で討議が行なわれた際には1日当たり7万円の「講演料」が支払われ、96年までの4年間でその会社から支払われた額は250万円に上ると説明した。上司にあたる教授にも、同じ会社から150万円が個人口座に振り込まれていたという。

 

 結局、贈賄側は罪を認めたが、ワイロではないと主張し続けたこの講師は不起訴処分となった。この事件も、製薬会社から臨床試験を担当する医師へ巨額の金が流れていた事実を露呈してしまったのだ。京都大学では、臨床試験が行なわれる場合、製薬会社と付属病院長が契約を結び、製薬会社から出資される委託研究費は国庫へ振り込まれ、国側か30%を差し引き、その残りが担当の医師に渡されるしくみになっていたのに、それに違反したかたちになる。しかし、それでもこの講師は、臨床試験の論文への謝礼を「公務ではない論文執筆の謝礼」と言い続けた。

 

 この講師の言い分や一連の事件を見ても、そこには、臨床試験を引き受けたら製薬会社から巨額の金をもらうのがあたりまえという医師の「常識」。ライバルより早く臨床試験を進めるためにはなんでもするという、製薬会社側の事情につけこむ医師たちの「慣習」が見え隠れしている。

 

 なにしろ、ソリブジン事件などで臨床試験の問題が取りざたされる前までは、臨床試験に接待攻勢はつきものだった。現に、そういった接待や、医師に頭を下げるだけの毎日に嫌気がさし、大手製薬会社を退職した40代の元MRが言う。

 

 「製薬会社は、新薬の治験が始まる前には必ず、治験に参加する医療機関の先生たちを全部呼んで、治験研究会というのを一流ホテルでやるんです。遠方から来る先生たちの交通費をメーカーがもつのはもちろん、近隣の先生たちも全部(イヤーで送り迎えしてましたから、研究会の日にはホテルの前にはズラーツと黒塗りの車が並んで、そりゃあすごいものでした。        

 

 研究会の内容は、はじめに治験の内容を説明して後は立食パーティーです。研究会に参加してもらう謝礼は、教授クラスで10万から15万円、実務を担当する講師や助手クラスで5万から7万円、下っ端の医師で3万円程度だったと思います。ホテルに行って話を聞いて、うまいもん食べただけでそんなお金がもらえてしまうんです。製薬会社としては、いそがしい先生たちをそれだけの時間拘束した拘束料という感覚ですね。さらに、担当の先生が飲むのが好きだったら、その後、2次会3次会に銀座や赤坂のようなところまでおつき合いして大金を使いました」

                      

 一説には、こういった治験研究会一回にメーカーが使っていた金額は千数百万円に上ったというしかし、製薬会社と医師たちの治験研究会や奨学寄付金がまかり通ってきた医学界の「常識」が実は非常識だったことに気づき始めた人も多い。

 

 ソリブジン事件を境に業界内外での規制も強まった。こうした製薬会社と臨床試験を担当する医師たちとの癒着や、「ワイロ」をもらっていることから発生するデータ隠しやねつ造を防ごうという動きが出始めているのだ。97年4月には、臨床試験が倫理的な配慮のもとにより科学的に適正に実施することを目指して、90年10月に定められた「医薬品の臨床試験に関する基準一GCP」をさらにきびしくし、薬事法改正で法制化した。とかく不透明だった臨床試験のデータを科学的なものにすることを目指す動きだ。そういったことを受けて、治験研究会を最近はどこかの大学の医学部の講堂でやったり、接待を極力自粛したりと、表向きには以前ほどの(デさはみられなくなってきている。

 

『知らなかった医薬品業界』より