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難治性癌疼痛治療-ケタミン,硬膜外モルヒネの適応を含むー

 

 

 癌の原発部位や転移部位によっては、痛みを緩和させることが非常に困難である。さらに、癌は進行すると全身疾患の性格を強め、モルヒネの経口投与や持続注射でも、痛みが制御されなかったり、副作用対策が奏効しないために、癌患者の疼痛管理に困難をきたすことがある。本項では、痛みの原因を概説し、ケタミン、硬膜外モルヒネ注入の適応について、症例を交えながら記載した。

 

         I。痛みの原因と難治性癌疼痛

 

1.痛みの原因と診断

 

 癌患者の痛みの原因は四つの要因が考えられる。第1の要因は、腫瘍自体(浸潤や転移など)が原因となった痛みであり、骨、神経、神経叢、内臓、血管、軟部組織への腫瘍の圧迫・浸潤であり、感染もその一つの原因である。例えば、8時と20時に徐放性モルヒネ30mgを服用している患者(肺癌、脳・骨・腹腔内転移)が早朝に痛みで目が覚めたが、日中のVASは2~3cmで、18時頃も痛みは自制内であった。日中は「横になると、痛みが増強するから、立位で生活していたので、痛みが軽減していた」ことから、この患者の痛みの原因は腰仙骨神経叢への転移が疑われる。

 

 また、骨転移は画像診断から否定されていた肺癌、脳転移の患者が強度の腰痛を訴えたが、髄膜癌腫症は痛みの出現部位が頭痛か腰痛のタイプであることを知っていれば、痛みの原因を診断できる。この症例では、硬膜外モルヒネ( 2 mg→0. 5mg/hr )を注入しか結果、①意識清明な除痛が得られ、②食欲が増進レ③家族との談笑の時間か多くなった。

 

 第2の要因は、癌の治療に起因した痛みであり、手術、放射線治療、化学療法による痛みや幻影肢痛などを挙げることができる。第3の要因は、腫癪に関連した(担癌状態や全身衰弱に関係した)痛みで、便秘、床ずれ、胃拡張、直腸の痙搴、ヘルペス神経痛などである。第4の要因は、癌や癌治療以外の原因に起因する痛みで、偏頭痛、リウマチ関節症などである。もちろん、以上の因子が単独で痛みの原因となるとは限らず、二つか三つが疼痛の原因となっていることや、痛みの原因が次々に変わることも多い。さらに、画像診断が1~3ヵ月遅れることもある。

 

2.痛みの原因と難治性癌疼痛

 

 ほとんどの痛みはWHO癌疼痛治療法を応用すれば軽減するが、神経や神経叢への浸潤・転移(とくに横断麻痺の直前)、消化管の通過障害による痛み、褥瘡の痛みは、NSATDs+モルヒネの治療効果が少ない。

 

 モルヒネ点滴長期投与中の患者で、死亡前1週間位の間にモルヒネ点滴投与量が最高投与量のまま死亡した患者32名のモルヒネ増量の原因は、呼吸困難が15例と約半数を占め、腹部膨満が9例、疼痛増強が8例であった1)。呼吸困難や腹部膨満があれば、投与モルヒネ量は痛み治療より多くなる。

 

           Ⅱ.難治性疼痛の治療

 

1.モルヒネ増量と補助薬

 

 モルヒネ経口投与を主軸にしたWHO癌疼痛治療法の基本は、with the right drug (by the ladder)、at the right time (by the clock)、in the right doseである。疼痛が増強したときは、投与モルヒネが吸収されているか、胸水や腹水貯留のために血漿モルヒネ濃度が相対的に低下していないか、癌自体による疼痛が増強したのではないかと考えるべきである)。除痛に必要な持続点滴の1日モルヒネ量の1 /10~1 /20を静注し、疼痛程度の変化を観察しモルヒネが有効であれば、積極的に増量する。

 

 36歳の女性。家族性大腸ポリポージスを基礎疾患とし、それまでに骨盤内臓全摘などの手術および放射線療法など、14年間の治療歴を持つ。直腸癌再発による左大腿部痛にモルヒネ300~400mg/日を点滴投与していた。疼痛の増強に伴いモルヒネの投与量は増加し続け、モルヒネの点滴量は一時的ながら4000mg/日に達したが、意識は清明で、喫煙のために面会室に車椅子で移動できていた。数日後に、眠気が出現し、疼痛は減弱、激痛よりむしろしびれ痛みに変わっだので(麻痺が出現)、モルヒネ点滴量を減量していった結果、患者の除痛に必要なモルヒネ量は400mg前後/日であった。 4000mgまで増加したモルヒネが、僅か10日の間に400mg前後/日になったことから、モルヒネの「耐性」を疑うより、痛みの増加に伴う「除痛に必要なモルヒネ量」が投与されたと考えられる。

 

 なお骨転移時の神経や脊髄圧迫を伴う難治性の刺すような痛みには、ステロイドプレドニン30~60mg/日)、カルバマゼピン(就眠前1OOmg/錠)を併用すると、疼痛が軽減する。

 

2.硬膜外モルヒネ注入法

 

 硬膜外モルヒネ注入による除痛法の特徴は、意識や運動機能に障害をもたらさず、長時間にわたる強力な除痛効果が得られることである。硬膜外モルヒネ注入は痛みの緊急避難の目的で用いられる。腫瘍の急激な増大や病態の変化などで突然痛みが増強した場合は、放射線治療の除痛効果が発現されるまで、硬膜外モルヒネ注入で痛みを取り除く必要がある。

 

 32歳の女性で、右腸骨軟骨肉腫で骨盤半裁の既往を有する。疼痛の部位は頭部、頚肩、胸、腹、下肢(幻影肢痛)と全身に及んでいたが、モルヒネ160~240mg/日の経口投与にてほぼ疼痛はコントロールできていた。突然、前胸部痛が出現し身動きできず、ほとんど眠れないほどであった。経ロモルヒネ投与量を320mgにしても全く効果が得られないので、モルヒネの静注や点滴投与に変更したが、それでも除痛は不十分であった。放射線治療が予定され、その治療が効くまでは硬膜外モルヒネ注入によりコントロールした。放治の効果が奏効し、カテーテルを抜去し、経ロモルヒネのみで除痛でき、外泊して温泉にも行かれるようになった。

 

 激しい痛みの除痛の他、硬膜外モルヒネ注入の適応は以下のようになる。①モルヒネ投与で強度な副作用の出現時:硬膜外腔に注入するモルヒネの量は、経口や経静脈的に投与する量と比べ、非常に少ない量で同じ除痛効果を得る。②多種の薬剤投与で疼痛管理が混乱した時:短期間に種々の薬剤が大量に投与され、意識レベルが低下し、混乱して痛みの程度が本人にも分からなくなることがある。硬膜外モルヒネ投与により確実に除痛すれば、他の投与薬剤を減量することができ、意識状態がはっきりし、痛みの程度を正確に評価できる。その後、経口投与などを徐々に再開すると、予想よりはるかに少ない鎮痛薬の量で鎮痛効果が得られることはよく経験することである。③消化器系の副作用が強く出現した場合(モルヒネ点滴、皮下注で管理困難な場合)などである。

 

 モルヒネ内服あるいは点滴から硬膜外モルヒネ注入法に変更した時の、除痛のための匹敵モルヒネ量は、それぞれ1/10~i/20、1/3~I/5である。モルヒネ内服あるいは点滴から硬膜外モルヒネ投与に変更し、経口や点滴モルヒネを補充しなくとも、禁断症状は出現しなかった。

 

3,ケタミン持続点滴法による鎮痛法

 

 ケタミンの鎮痛作用は強力で、5 mg/hr の速さでの点滴静注でも十分な鎮痛が得られる。 したがって、前述の難治性癌疼痛に1日量125~250mgのケタミンを投与すると、傾眠や夢・幻覚などの副作用が出現せずに、より良き除痛状態が得られる。ケタミンに精神症状の予防を目的に、ドロベリドール1Omgないし20mgを混じるのもよい方法である。

 

4.硬膜外局麻

 

 褥瘡の痛みのために、日夜ベッドに臥床出来ずに、ベッドを利用し、両腕で体重の負荷を軽減させている患者に硬膜外チュービングを行い、硬膜外にキシロカインを注入すると、患者は仰臥位で暮らすことが可能となる。さらにケタミン250mg/日の持続点滴を併用した結果、点滴モルヒネを減量でき、幻覚も消失し、車椅子で病棟内を散歩出来るようになる。

 

5.鍼灸治療

 

 西洋医学のみでは、比較的改善が困難な癌患者の苦痛緩和に対して、東洋医学を導入した結果、しびれや四肢の浮腫に有効であった。さらに、主訴が軽快すると同時に、他の愁訴が軽快したり、全身的に快楽が得られることで、精神的な安定が得られる。

 

 以上述べた難治性癌疼痛の治療法については、これからの研究課題でもある。