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モルヒネの副作用対策

 

 モルヒネ投与開始にあたり、モルヒネの使用法だけでなく、副作用とその防止対策についても患者に説明し、協力を得ておく。患者は余分な不安を捨てて副作用に対処できるようになる。

 

 [便秘対策]

 

 便秘は、モルヒネ反復投与で、ほぼ必発する副作用である。モルヒネは、腸管の輪状筋を収縮させ、肛門括約筋の緊張を高めて便秘を発生させる。腸管の蠕動を高めて、平常通りの回数の便通を維持することが対策の目標である。

 

 モルヒネの投与開始時から緩下薬(ことに蠕動刺激薬)の併用を続ける。必要な投与量に個人差が大きいので、モルヒネの場合と同じような投与量調整が必要である。補助的な治療手段も考慮する。少量の水様便が頻回に排出されるときには宿便を疑い、直腸内指診により確認する。

 

緩下薬の使用法:

 

○センナ製剤(プルゼニド

 

 ・投与開始量は1日2錠の経口投与

 ・下痢となれば1錠に減量する

 ・2日間便通がなければ増量する

 ・増量は、2→3→4→6→8→10錠/日の順に行う

 ・自験例では、最大15錠/日まで安全に投与している

 ・少量のときには就寝時の1回投与とし、多量になったら1日分を2~3分服とする注)錠剤の服用が困難な時には、セノコット、アローゼンなどの顆粒状の製剤を用いる。セノコッド0.7gがプルゼニドの1錠分にあたる。

 

○ピコスルファート・ナトリウム(ラキソペロン)

 

  ・投与開始量は1日10滴の経口投与(1滴中の含有量は0. 5mg )

  ・下痢となれば5滴に減量する

 ・2日間便通がなければ、増量する

 ・増量は、10→15→20→30→40→50滴/日の順に行う

 ・自験例では、最大50滴の投与まで安全に投与している

 ・少量の時には就寝時の1回投与とし多量になったら1日分を2~3分服とする

 

 注)ラキソベロン黔こは2. 5mg錠がある。

 

○重質酸化マグネシウム(仮性マグネシウム

 ・1日暈0.5~3gを3分服とする

 ・センナ製剤やラキソペロンと併用するとよい

 

○補助手段

 

 浣腸(グリセリンほか)、坐剤(レシカルボン、テレミンソフド)、用手摘便など

 

 ・食事管理(患者の好みに合わせた繊維成分の多い食事とする)嘔吐対策]

 

 3分の1以上の患者にモルヒネ投与開始時から2週にわたり発生する。嘔吐を伴うこともある。モルヒネの嘔吐中枢刺激作用によるので、どの投与経路によっても発生しうる。

 

 中枢作用の制吐薬の経口投与が基本的な対策である。嘔吐がある時には注射とする。

 

 次の制吐薬のうち使いなれた薬を選択する。2剤以上の併用には、増強効果がある。モルヒネの催吐作用への耐性は比較的早期に発生するので、2週にわたり嘔気が防止されていたら制吐薬の中止を考慮してよい。

 

制吐薬の使用法:

 

○メトクロプラミド(プロメチン)

  ・10~20mg/回を1日2~3回経口投与

  ・少量では有効率が低い

  ・錠剤、注射剤がある

 

プロクロルペラジン(ノバミン)

 

 ・10~20mg/回を1日2~3回経口投与

 ・少量では有効率が低い

 ・錠剤、注射剤がある

 

〇ドンベリドン坐剤(ナウゼリン坐剤゜)

 ・嘔吐があるときに有用である

 ・ 60mg/回を1日2回

 

○上記の処方が十分な効果をあげないときは、次のいずれかを経口投与する

 ・ハロベリドール(リントン゜) 0. 75~1- 5mg/回を8~12時間ごと

 ・チミペロン(トロペロン゜) 0. 5~Img/回を8~12時間ごと

 

 [眠気対策]

 

 眠気は、高齢者や全身衰弱の強い患者にモルヒネ投与を始めた初期にみられることが多い。モルヒネの過量投与を示す最初の副作用症状なので、そのときには投与量を半減する。しかし、痛みのために眠れない夜が続いていた患者は、痛みが消失すると寝不足解消のために眠る時間が長くなる。覚醒時に辻つまのあった話ができれば、モルヒネの薬理作用による眠気でないと考えてよい。

 

  ・眠気が軽度な場合は、モルヒネを増量せずに投与し続けると、数日で消失する

 

  ・眠気が高度な場合は、投与量を半減して投与を続けると数日で消失する。モルヒネ投与の中止を考慮する必要はない

 

  ・減量しても眠気が残り、痛みが増強するときには、メチル・フェニデート(覚醒性抗うつ薬 リタリン) 0.5~lg/回を朝と昼の2回投与する

 

 [錯乱の対策]

 

 高齢者や全身衰弱の強い患者にモルヒネ投与を始めた初期に、しばしばみられる。

 

  ・モルヒネ投与量を増量せずに投与を続けると数日で消失する。高度な場合にはモルヒネを減量する

 

 [不安定感、めまい感の対策]

 

 錯乱の場合と同様に対処する。

 

 [排尿障害の対策]

 

 排尿遅延が主な症状であるが、発生頻度は少ない。

 

 ・コリン作動性薬の併用。ときに導尿

 ・ベタネコール(ベサコリン゜)1回量10~20mgを1日3回経口投与。

 

  副作用に唾液分泌亢進がある

 

 [発汗の対策]

 

 少数例に発生し、肝障害のある場合に多い。

 

 ・室内を換気し、室内の温度を下げる。衣類や寝具の交換をこまめに行う

 

 ・コルチコステロイド(リンデロン、 デカトロン)の併用がときに奏効する

 

 [モルヒネ不耐性の対策]

 

 副作用が制御困難でモルヒネ投与が続けられない状態で、稀にしか遭遇しない。

 

 ・モルヒネと化学的組成が異なるオピオイドに切り替えるほか対策がない。

 

 [呼吸抑制の対策]

 

 単なる呼吸数減少ではなく、呼吸のすべての相が抑制され、C02ナルコーシスの症状を示す。除痛に必要な投与量よりもっと多い量で発生するが、少量のモルヒネで除痛が得られる患者では、比較的少量のモルヒネで発生することがある。

 

 ・酸素吸入、麻薬拮抗薬ナロキソンの投与