独創的な新薬の開発が待たれる武田薬品工業

 

 わが国最大の医薬品メーカー。利益でも永らく卜ップの座にいたが、営業利益はすでに三共に抜かれ、経常利益でも九五年三月期に卜ップの座を三共に明け渡す可能性が強い。

 

 同社は、ほぼ毎年一〇〇~一五〇億円程度の新薬を市場に投入してきたが三共のようなホームラン製品がなかったため、利益で三共に逆転されてしまった。同社のような売り上げ規模になると、一〇〇億円程度の新薬ではなかなか利益拡大に貢献できない。 

 

 もっとも、九二年には久々にピーク時年商二〇〇億円超が期待できる新薬が発売された。前立腺ガン治療薬「リュープリン」と抗潰瘍剤「タケブロン」がそれで、「リュープリン」はすでに欧米で先行して販売されていたもので、海外売上高は四〇〇億円程度に達しているとみられる。「タケブロン」はプロトンーポンプ阻害剤で、先発の「オメプラゾール」を急追している。

 

 また、経口糖尿病用薬「グルスタット」も二五〇億円以上の潜在市場があると予想されている。

 

 脳代謝改善剤「アバン」をはじめ、既存主力品の伸びは概ね鈍化しているが、前記三品の大型化によって九〇年代後半には安定成長の局面が続くとみられる。

 

 現在申請申、あるいは開発中の新薬も充実しており、九四年には注射セフェム系抗生物質「ファーストシン」、九五~九六年には抗喘息薬、血液凝固阻止剤などが発売される見通し。そして、とくに注目を集めているのが、フェーズⅡにある糖尿病用薬「AD‐4833」とアンギオテンシン2受容体拮抗剤「TCV‐116」の二品だ。

 

 「AD‐4833」は三共の「ノスカール」と同系統の薬剤、「TCV‐116」は現在先行しているデュポン/メルクのMK‐954より有効性が高いとみられており、ともに戦略商品として期待されている。

 

自社開発品には二番手。三番手銘柄が圧倒的に多い

 

 同社の研究開発体制は、つくば市に開拓第一研究所、農業科学研究所、応用技術研究所を、大阪工場地区に生産技術研究所、開拓第二研究所、創薬第一~第三研究所、DDS研究所、薬剤安全性研究所、分析代謝研究所、製剤研究所、製薬研究所、フードービタミン研究所、大阪化成品研究所、動物薬研究所を、湘南工場地区に東京化成品研究所を設置している。

 

 海外展開、とくに販売面では、欧米に医薬品販売の合弁会社を設立済みで、他社を大きくリードしている。

 

 対売上高研究開発費率は八位だが、研究開発費そのものは業界トップ。研究員数でもトップ。開発力には定評があり、出番を待つ自社開発新薬数も豊富で、やはり底力ではナンバーワンかもしれない。

 

 とはいえ、自社開発品には二番手、三番手銘柄が圧倒的に多く、革新的新薬への取り 組みという点では後塵を拝している感は否めない。改良型でいいものをつくり、シェアを確保するというのが同社の戦略パターンだ。

 

 海外で大型化している「リュプリンーデポ」(日本では「リュープリン」)にしても、革新性の高さで売れているというより、DDSという技術の勝利であって、独創的な新薬はまだ出ていない。

 

 もちろん、革新性の高い新薬の開発にも取り組んでいるが、成果が出ていないというのが現状なのだろう。

 

 マーケットカまで含めた総合力では他社をリードしているが、国内製薬メーカーのりーディングーカンパニーとして生き残るためには、革新的な新薬の開発が不可欠といえ

 

 売上高当期利益率、営業利益率、ROEはすべて第五位で、財務面では“並”の会社だが、高採算の自社開発品比率の向上、販売管理費の抑制、食品部門のリストラなどにより、収益性は改善に向かうとみられる。

 

 当面は、C型肝炎治療剤「キャンフェロン」が収益回復のけん引役となり、大型新薬が順調に伸びれば、九〇年代後半のニケタ利益成長も可能だろう。