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世界には通用しない:日本の新薬審査基準「クレスチン」と「ピシバニール」の“事件”

 

 従来、日本の製薬メーカーが開発した新薬は、日本の厚生省でしか認可されていないというケースが少なくなかった。もともと日本の審査基準はあいまいで、日本で承認されても審査基準のきびしいアメリカで承認されることは容易なことではなかったという。

 

 極論すれば、日本でしか販売されていない医薬品の薬効は疑わしいといえなくもない。実際、年商六〇〇億円を超える大型医薬品「クレスチン」と同じく三〇〇億円超の「ピシバニール」の抗ガン剤二品目が、八九年末に突然薬効を否定されるという。事件”が起こった。

 

 「クレスチン」は七六年に厚生省が呉羽化学工業に製造を認可(販売は七七年、三共)し、八二年から六年連続で医薬品年間売上高ナンバーワン(抗ガン剤としての年間売り上げ世界一)だった。「ピシバニール」も七五年から販売され、年間売上高ベストテン上位の常連だった。

 

 ともに国からガンの万能薬というお墨み付きをもらって売り上げを伸ばしたわけだが、そのお墨み付きが厚生省の中央薬事審議会によって突然、取り消されてしまったのだ。

 

 なぜ国は製造承認した時点で薬効ありと判断したのか? なぜ薬効ありから薬効なしに変わったのか? 仮に薬効がなかったとすれば、なぜ医師は効かない薬を使い続けていたのか? 医療行政と医療現場に対する国民の不信が一気に高まったのも当然だろう。

 

 薬効取り消しに至る過程で、抗ガン剤の有効性に関する判定基準が変更されたことも“事件”を誘発した一因と思われるが、「クレスチン」、「ピシバニール」とも日本でのみ販売され、欧米各国では使用を認められていなかったことも見逃せない。国際的に通用しない医薬品が、長期間売り上げナンバーワンの座に居座っていたことは、やはり問題ありといえよう。

 

 今後は、日本の患者のためにも、製薬メーカー自身のためにも、国際的に通用する新薬の開発が求められよう。研究開発に投じた巨額の資金は国内市場だけでは回収できなくなりつつある。換言すれば、世界的に通用する新薬を開発できない企業は、世界で生き残るのは難しいということ。とにかく、画期的な新薬の開発こそ、日本の製薬メーカーにとって急務といえよう。

 

 新薬の製造承認基準についてつけ加えると、日本で開発された世界的新薬については、厚生省は審査期間の短縮化を図る意向とされ、事実、藤沢薬品工業の「プログラフ」に関しては、わずか二四の臨床試験症例数で新薬承認に踏み切っている。

 

 しかし、医療現場からは、種々の副作用の症例も報告されており、製造承認が早すぎるとの批判の声もあかっている。

 

 いくら革新性の高い新薬であっても、審査の短縮化だけでなく、安全性もより重視してほしいものだ。