エイズ治療薬を待つ膨大な感染者数

 

 すでに世界で1000万人以上の人がエイズのウイルスに感染している(発症した人は一〇〇万人弱)といわれており、その数は年々増加している。

 

 これだけ患者数が多い病気であるにもかかわらず、平イズの根本的な治療薬はまだ開発されていない。これには二つの理由が考えられる。

 

 一つは、エイズが病気として認知されてからまだ日が浅いことだ。エイズという病気が初めてアメリカで報告されたのは一九八一年のこと。まだ、十数年しかたっておらず、しかも患者数が急増しだのはここ数年のこと。新薬開発に要する年数を考えれば、未開発であっても致し方ないところか。

 

 もう一つの理由は、エイズを引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)がきわめて退治しにくいためだ。

 

 HIVは免疫細胞自身の中に隠れ潜んでしまうため、自然な免疫システムでは退治することは難しく、免疫力が弱まると合併症を引き起こしやすい。また、ワクチンなどの薬は、ウイルスの姿や性質に合わせて設計されつくられるが、HIVは姿かたちを変えやすく、ワクチンなどの薬も機能しにくいといわれている。

 

 現在、エイズ治療は抗ウイルス療法、免疫強化療法、それに発症後の対症療法の三つの方向から行なわれており、エイズ治療薬の開発が待たれるところだ。

 

 感染者数が膨大なだけに、画期的なエイズ治療薬が開発できれば大化けまちがいなし、というわけで、製薬メーカー、異業種メーカーが入り乱れてエイズ治療薬の研究開発にあたっている。

 

 現在、HIVがリンパ球に取りつくのを防ぐ薬、HIVが増殖する際に働くプロテアーゼという酵素を阻害し増殖を妨げる薬、HIVワクチンなどの開発が有望視されているほか、遺伝子治療の研究もスタートしている。

 

 まだ、エイズ治療薬への道のりは遠そうだが、人類は天然痘、ポリオ、麻疹など感染症にはことごとく打ち勝ってきており、エイズが難病でなくなる日が一日も早くやってくることが期待される。